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第87話 特別な報酬

Author: 黒蓬
last update Last Updated: 2025-05-17 06:00:35

宿に帰る前に冒険者ギルドに寄って、受付でクエストの完了報告を行った後、例の鈴について聞いてみた。

「これ階層ボスの宝箱から出てきたんですけど、何か分かりませんか?」

俺が鈴を見せると、受付嬢は少しの間その鈴を見ていたが、はっ!と何かに気づいたかのような仕草を見せると慌てた様子で「ちょ、ちょっとこちらへ!」と俺達を応接室に案内した。

「突然失礼致しました。鑑定士を呼びますので少々お待ちください」

そう言って受付嬢は説明もなく部屋を出て行った。

「何なんだいったい。やっぱりこの鈴に何かあるんだろうか?」

「まぁレアケースの報酬ですから、ただの鈴ってことはないと思いますけど随分慌ててらっしゃいましたね」

『何の説明もなく出て行くのは流石にどうかと思うわ』

そんなことを話しながら待っていると、少しして一人の職員が部屋に入ってきた。

「お待たせして申し訳ございません。鈴の鑑定に来られたのはあなた方で間違い御座いませんでしたか?」

「鑑定っていうか、何か知りませんか?って聞いたら突然部屋まで案内されたんですけど」

「それは失礼しました。早速ですが、その鈴を見させて貰っても?」

「これですけど・・・」

妙に緊張した面持ちでその鈴を調べ始めた職員を見ていたら、なんだかこちらまで緊張してきた。しばらくすると鑑定が終わったのか、その職員の視線がこちらに向いた。

「間違いありません。これは影呼びの鈴です」

「影呼びの鈴?」

「えぇ、一定量の魔力を込めることで対象の魔物の影を呼び出し使役することができるものです。効果は長くても数分程度ですが、魔力だけで一時的に戦闘要員を増やすことが可能な超レアアイテムですよ!」

説明している内に興奮してきたのか職員さんの口調が高くなっていた。

しかし、今聞いたばかりの俺達はまだピンと来ておらずそのテンションについていけていない。

「魔物を一時的に味方として召喚できるってことか。どんな魔物が召喚できるんですか?」

「そりゃもちろんこの鈴を落とした魔物ですよ。あなた方は何の魔物からこれを手に入れたんですか?」
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